親愛なる娘へ

2025年3月29日、小雨の降る土曜日。

あなたは保育園を卒園しました。

 

生後8ヶ月で保育園に入ってからの6年間。あっという間だったようで、振り返ればいろんなことがありました。

2歳10ヶ月のときに、自閉症と知的障害の診断を受けたあの日から、私たち親子は何度も選択を迫られました。

時には退園の危機に直面し、どうしても心が折れそうになることもありました。

 

2歳の秋、先生から「卒園児の理想像とはだんだん合わなくなるかもしれません。転園も考えてみては?」と伝えられた日。私は悔しくて、悲しくて、泣きながら帰りました。

その言葉に傷ついたのもあるけれど、それ以上に「私が働き続けることは、ただのわがままなんだろうか」と、自分を責めた気持ちが大きかったのです。

 

でも、そんな時に手を差し伸べてくれた療育の先生の言葉が、私を救ってくれました。

 

「保育園の先生たちは困っているのかもしれない。話を聞きに行ってみましょうか。」

「保育園と療育では大事にしている“正義”が違うだけなんです。」

「先は長いんですから、“自分たちのやりたいことをやりたい”という気持ちは大切にしましょうね。」

 

その励ましで、私は前を向くことができました。

それからは療育の先生と一緒に、何度も保育園に足を運びました。どうすればあなたが過ごしやすくなるか、先生たちと一緒にたくさん話し合い、工夫を重ねてきたね。

 

「園で困っていることはありませんか?」

いつしか、私の口癖になっていました。

 

そうやって少しずつ、会話が変わり、関係が変わり、あなたの居場所ができていきました。

行動が変わるのは、対話があるからこそ——それを、あなたが私に教えてくれました。

 

でもね、平日は療育もあり、毎週遅刻していた私たち。仕事にも、保育園にも、申し訳ない気持ちを抱えながら走り続けた日々は、正直とても苦しかった。

「仕事を辞めたら、少しは楽かな」

そんな風に考えたことも、実は何度もありました。

 

それでも、あなたは少しずつ、たくましく育っていきました。

年長さんになる頃には、園生活にもすっかり慣れて、運動会、鼓笛演奏、体育発表会、お泊まり保育、英語クラス——どれも一生懸命、やりきってくれました。

 

卒園式で名前を呼ばれたあなたが、はっきりと返事をし、堂々と卒業証書を受け取る姿を見たとき、私は涙が止まりませんでした。

 

これから始まる小学校生活。

うまくいかない日があってもいい。無理に学校や学童に行かなくたっていい。

「楽しくやり続けること」を大事にして、あなたのペースで歩いていってほしいと思っています。

 

たくさんの悩みと葛藤があったけれど、この幼い時期は、家族にとってかけがえのない時間でした。

あなたが笑い、夫が支えてくれて、私たちは一緒に進んできた——そんな時間だったから。

 

そして最後に、あなたへ。

一度も「保育園に行きたくない」と言わず、毎日笑顔で通い続けてくれて、本当にありがとう。

そして、私の戦友でいてくれたお父さんにも、心からありがとう。

 

あなたの人生は、まだまだこれから。

でも、まずは6年間、よくがんばったね。

 

心からの愛をこめて。

 

お母さんより

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